chirashi

エモーショナルな人生を

同じ病気の人とつながるのが恐かった

キャンサーペアレンツ理事の高橋さんと対談をしました。
cancerwith.com

キャンサーペアレンツは「こどもを持つがん患者のためのコミュニティ」で、わたしは2018年から一部のデザインを副業としてお手伝いしています。代表の西口さんがTwitterで呼びかけていたのがきっかけで、実際に手がけた仕事は以下の記事に書いています。
こどもを持つ“がん患者”のためのコミュニティ「キャンサーペアレンツ」でのお手伝いについて - chirashi

お手伝いを始める際、ボランティアでも良いと伝えていました。だけれど西口さんは「キャンサーペアレンツはきちんとビジネスになるよう運営していくから」と仰り、強く感銘を受けたのを覚えています。がん患者の活動(もう少し広くいえば社会活動)というのは、寄付で成り立っているものが多く、それにわたしも課題意識があったからです。西口さんと一緒にお仕事をした時間は長くなかったけれど、いまわたしがCancerWithを作っているのも、そういった「きちんとビジネスにする」という思想が強くあります(実際には課題だらけですが……)。

ところで、わたし個人は、病気になった直後「患者会」や「オンラインコミュニティ」は遠ざけていました。それは、もっと軽い病状の方を見て妬んでしまうんじゃないか、逆にもっと重い病状の方を見て不安になるんじゃないか、という恐怖があったからです。乳がん患者の多くは40代や50代で、当時20代の自分が親に近い年齢の方たちと「同じ病気」で「可哀想に思われるんじゃないか」という、わたし自身が現実を受け入れきれていない背景もあったのだと思います。

その後、SNSで同病や近い病気の知人が何名かできて「同じ病気だからこそ話せることがある」とは身をもって理解しました。もともと懸念していた、妬んだり不安になるというのはほとんどありませんでした。どんな病状であれ、それぞれの人生があることが当たり前だと分かって、勇気になることが多かった。

人間なので相性があるけれど、それは病気に起因するものではなく、会社でも地域でも、人間関係を形成する上で必ず起こる話です。逆にいえば「病気だから」という理由だけで仲良くなることはなくても、病気をきっかけに新たな人々に出会い、その中で自分の価値観とあう人々と関係が築けたのは良かったと思っています。

反面、「同じ病気だからこそ言えないこと」も存在することに気づきました。例えば、お金のこと。もともとの仕事や家庭の状況でお金に関する意識は大きく異なる。「自分で自分の治療費を稼げばよい」という人と「自分の治療費と家族4人を一人で養う必要がある」という人、「仕事を休むと生活費も危うい」人とでは、大きく事情が異なります。他にも、「これから結婚して妊娠したい人」と「妊娠はしなくて良い人」、「今まさに乳児を育てている人」でも異なる。そういう話は、表面上では共感しあえて気持ちが楽になることはあっても、具体的に解決し合うのは、患者同士ではなかなか難しいものです。

そういった専門的な悩みを解決するために生まれたのがCancerWithです。ピアサポートの良さは患者会やコミュニティで維持しつつ、そこでは解決しきれない専門的な悩みをCancerWithで解決していけると良いなと思っています。


cancerwith.com