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エモーショナルな人生を

「ファンベース」読んだ

今期は仕事でブランディングやマーケティングを担当するので、いくつか本を読んでいる。読書はだいたいKindleなので、気になった部分はマーカーを引いているのだけれど、それだけでは考えたことを忘れてしまうので、後々の自分のためにブログに記録を残します。

わたしは、どんな商品・サービスも顧客(ユーザー)を大事にすることが価値につながると信じていて、売上やリソースなどとのバランスはあれ顧客起点の商品開発や企画がずっと好きだ。特にCGMサービスに対してはそういう思いが強い。誰かの課題を解決するものを作りたいし、その誰かが自分だったら良いなと思っている。だけど、それでは直接売り上げにつながらないこともある。どうしたら良いんだろう……? ということに対する考え方が載っていたのが「ファンベース」だった。

「ファンベース」とは、ファンを大切にし、ファンをベースにして、中長期的に売上や価値を上げていく考え方だ。

ファンとは

一般的に、ある商品をよく買ったり、繰り返し使ってくれる人を指す言葉としては、「優良顧客」だとか「ロイヤルティユーザー」とかそういう表現が多いと思う。本書内の「ファン」はそれとは少し違っていて、そのサービスや商品の「大切にしている価値を支持している人」を指している。平たくいうと「その商品を好きな人」と理解した。

あなたの担当商品にまだなんの興味関心もない新規顧客たちが、本当に受けとっってくれると思いますか?もし確実に受けとってくれる人たちがいるとするならば、それは「その商品にすでに興味関心がある人」だ。ファンである。

ファンの中でも特に偏愛が強く、商品や会社の事情を理解している人を「コアファン」と呼んでいる。コアファンは、身内であり対等という考え方をする。身内だから、特別扱いはしない。お店でいえば、ちょっと手伝ってくれるお得意さんのような存在。価値観を共有する一方で、へりくだる必要はない。これにはとても感銘を受けた。

支持母体となってくれるコアファンは、そういう「自己中心的な偏愛の人」ではなく、「企業の事情や方向性を分かった上での偏愛な人」にすべきである。

特別扱いや接待を要求する人は、身内ではない。コアファンではない。

ファンであることに自信を持ってもらう

意外だったのは、「ファンは自信がない」のだそうだ。本書の中には、雑誌『レタスクラブ』の躍進と、それをメディアが取り上げてから、急にファンのソーシャルコメントが増えた話が例示してあった。

「この商品が好きな自分ってイケテルのか」「この商品のファンって言って笑われないか」(中略)など、意外と自信がないのである

自信を持ってもらうために一番良いのは、他のファンのオーガニックな言葉を読むことだ

個人的にも「ファンだとしても自信がない」というのは、本当に? と一瞬思った。けれど、自分にも心当たりがある。最近、我が家ではニトリの寝具がブームなのだけれど、これはid:Chikirinさんのブログ*1を読んでから虜になったもので、それまではニトリ製品に対して「安かろう悪かろう」というイメージを持っていたし、好きと公言もしづらかった。

だから、企業や商品担当ができることは、さまざまなファンの言葉をほかのユーザーに届け続けることである。

愛着をより強くする

愛着をより強くする方法としては、3つが提示されていた。

①商品にストーリーやドラマを纏わせる
②ファンとの日常的な接点を大切にし、改善する
③ファンが参加できる場を増やし、活気づける

①は、顧客の課題を解決するために、どれだけの「想い」があったかということ。どういう人がどれだけプロジェクトに関わっていたのか。どんな苦労や努力がったのか。そういうことが、ファンの愛着の感情を起こさせるのだそう。

これもすごく共感する。実はここ数年M-1グランプリを予選から見続けているのだけれど、2019年は特にハマった。いちばんの理由は、参加芸人の裏側を見せる「アナザーストーリー」という番組を見たことで、ストイックな姿を見ていまは「かまいたち」の大ファンです……。

②は例としてSNS担当を取り上げている。ユーザーとの距離感を理解して、自分自身の言葉で愛着を積み重ねていくのがとにかく重要である、と感じた。

単なる企業からの一方的なお知らせを発信するのが彼らの仕事ではない。SNS担当者は、他に代えがたい愛着を作ってくれている貴重な存在なのだ

③はイベントやコミュニティづくりの話なのだけれど、一番目から鱗だったのは以下である。当然といえば当然だけど、企画開発をしているとどうしてもサービスや昨日に目がいってしまう。自分たちが提供しているサービスの本当の価値を理解する必要があるなと強く思った。

ランニング・シューズのコミュニティを作りたいなら、シューズ好きではなくランニング好きに注目すべき

大切にして居る価値をより前面に

ここまでで何度も、首がもげるほどうなづいてきたのだけれど、一番わたしに刺さったのは以下の部分。とにかく、何度も繰り返し、そしてわかりやすく、価値観を伝え続けないといけない。がんばるぞ。

あなたの「価値観」を謙虚に隠しておく時代ではない

社員の信頼を大切に

利用者に価値を伝えるためには、インナー(社内)コミュニケーションも大事だと説いている。ただし、朝礼で唱和とかそういう話ではなく、ワークショップをやるとか、ミッションについてディスカッションするとか、そういうこと。一番大事なのは、社員が(チームメンバーが)全員同じ方向を向くこと、だそうだ。この辺は「明日のプランニング」という筆者の本に詳しくあるそうなので、また読んでみたい。

社外で信頼されたかったら、社内で社員に信頼されないといけない

ファンベースを楽しむ

ここまでで、ファンベースについて理解し共感したのだけれど、いかんせん時間がかかるし労力がかかる。それでも本当にやるべきなのだろうか? と、わたしはどうしても思ってしまいがちで、心が弱ったりする。そんなときに、読み返したい文章がいくつもあったので、引用して締めくくります。

時間がかかるのではない。楽しいからじっくり時間をかけたいのである

会社からは目の前の結果を求められるだろう。それはあなたを疲弊させるだろう。(中略)その過程を密かに楽しもう。数字は必ず後からついてくる

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