chirashi

エモーショナルな人生を

好きなことをして生きていい

先日、AFTER5というプロジェクトを立ち上げ、サイトを公開しました。AFTER5は、がんや難病などの患者さんにインタビューを行い、「告知から5年」以降の情報を集めるWebメディアです。現在は、有志のメンバーで具体的な企画内容を詰めています。

で、この立ち上げ、企画構想のTweetをしてから、ティザーサイトを公開するまで、2ヶ月弱。そこそこスピーディだったなあ、と自分では思っています。しかし実際には、企画を考えるまでと、公開を決意をするまでに、それぞれ葛藤がありました。自分のための記録として、その経過を書こうと思います。

新しいことに取り組むのは、苦しいだけだと思っていた

がん治療のために休職をして、復職をして、今はすっかり普通に暮らしてます。もう見た目や日々の生活の様子では、わたしががん患者であることは分からなくなりました。何かの折にカミングアウトをすると、必ず驚かれます。いつか元の生活に戻ることを目指して治療をしてきたので、そういう未来に立っていられるのは嬉しいです。

抗がん剤治療中は、仕事のお休みはもちろんのこと、日々の生活もままならないくらい弱っていました。だから、2016年に時短勤務で復職したときは「無理をしないこと」を目標にしていました。自分のためにも、まわりのためにも、体力と精神力に余裕を持っていた方が安全だと考えたからです。そのまま勤務時間を伸ばし、2017年にフルタイムで働けるようになって以降も、その気持ちはうっすらと残っていました。

それがいつしか、新しいことに挑戦したり好きなことに取り組むのはつらいことだ、という思考に陥っていました。今になって思えば、病気の前にやりたかったことができなかった(治療で諦めざるをえなかった)悲しみを緩和するための自己防衛もあったのでしょう。好きなことをするのは、もしそれが実現できなくなったとき、そしてそれが防ぐ手立てのないものであればなおのこと、つらいです。ただ粛々と受け入れて、まずは生きるための選択をする必要があります。

あるいは、薬の副作用による抑鬱も影響していたのかもしれません。ホルモン治療は、更年期症状のひとつとして抑鬱が出ることもある、という話を主治医から聞いていました。

とにかくわたしは、「何もやらないほうがいい」という、自分自身の呪縛に押しつぶされていました。というのは格好をつけた表現で、要するに、日々だらだらスマホを見ながら過ごしていました。

複数のコミュニティに属して気づいた「やりたいからやる」の良さ

そんな中で、これまでとは異なるコミュニティに属す機会がありました。それをきっかけとして、「やりたいからやる」という素直なモチベーションを思い出していきます。

高専カンファレンスのお手伝い

高専カンファレンスとは、高専在学生や卒業生が主体となりLTや勉強会をするイベント。わたしは2008年に開催された第2回以降、何度か参加してきました。その後、2012年以降は、仕事の忙しさやプライベートの変化もあり疎遠に。そんなとき(2017年の年末)、カンファで知り合った先輩の id:ayuka_hit さんから声をかけられ、学生さんと一緒に運営に加わることになりました。豪雨で中止するという不運も乗り越え、2019年1月の高専カンファレンス新春in大阪を開催をしました。

運営は、ほとんどが在学生。もはや保護者の方が近いほど年齢が離れている学生さんたちでした。そんな彼らのMTGやSlackでの議論をみて、「やりたいからやる」というモチベーションが最上位だということに気づきました。そういえば、わたしも「やりたいからやる」という感情でずっと生きてきた人間だったなあ、と思い出したのでした。

キャンサーペアレンツの開発協力

同時期、2018年の夏にキャンサーペアレンツの代表・西口(id:nishigucci2492)さんに出会います。キャンサーペアレンツとは、こどもを持つがん患者のためのWebコミュニティ。西口さんは2015年に自身が胆管がんステージ4の告知を受けており、そのときの思いからサービスを立ち上げました。Twitter上でWebデザイナーを募集していたことをきっかけに、開発・デザインをお手伝いすることに。こう考えてみると、だらだらSNSをみるのも捨てたものではないですね…


キャンサーペアレンツから生まれたがん患者向け調査サービス「キャンサーベイ」

キャンサーペアレンツは、そのユーザーを活かし事業化も行なっています。それでも、やはり最初のモチベーションは「自分が困るから」ということ。そういうきっかけで新しいサービスや事業を初めても良いんだな、とあまりに当然のことを思い直しました。

1円にもならないことをやっても良い

2019年のGW、世間は10連休と改元で盛り上がっていました。そんなとき、夫は、滋賀の県境を8日間かけて1周する、という狂った(褒めている)レースを仲間たちと主催していました。

このレース「滋賀一周ラウンドトレイル」は、構想から3年、実際の稼働から1年半ほどで実現しています。無謀なレースを、情熱のみで作り続ける夫たちを見て、「お金にならないことで人を集めてプロジェクトを推進しても良いんだ」と目から鱗でした。もちろんお金だけが全ての価値ではないし、何より実際には地域やコミュニティへの貢献もあります。それでも、その企画は利益を産むのか? という凝り固まった価値観を持っていたわたしにとって、衝撃的で、あまりに魅力的でした。

そういった色々な経験があり、やっと「好きなことをやろう」という当たり前すぎる思いを強くし、そして頭に浮かんだのが「AFTER5」でした。

やりたいことをやろう

ところで、わたし自身のGWは、産後2週間の妹(と甥)の手伝いにいっていました。産まない決断をしたわたしにとって、初めての育児に奮闘する妹は新鮮でした。同時に、自分で選んだ人生を生きることは、本人も周囲も幸せになると改めて気づき、わたしももっと自由に生きれるじゃんと悟ったのでした。

自分以外の全員がいなくなっても、誰かが傷ついても

「やりたいことをやる」という覚悟を持ったわたしにとって、「AFTER5」の立ち上げを最後に後押ししたのは、同じく乳がんの鈴木美穂さんの著書を読んだことでした。著書の中の「自分以外の全員がいなくなっても続ける覚悟があるのなら、やったらいいと思う」というフレーズと、全ての人が傷つかない企画はないという趣旨の文章で、覚悟を決めました。

その後、道はまだまだ半ばですが、「素敵なプロジェクトを立ち上げてくれてありがとう」や、「コンセプトに共感します」「応援しています」という言葉を聞くたび、ゼロから何か生み出す喜びは、何事にも変えがたいと感じます。これからも色々な苦しみはあるだろうけれど、好きなことをして生きていきます。

#「迷い」と「決断」

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