chirashi

エモーショナルな人生を

5年後の自分へ

がん患者にとって、5年後、というのはひとつの区切りである。

告知を受けてから散々「5年生存率」ということばを見た。インターネットで病気に関する情報を見るのは止めようと思いつつ、指が勝手に検索していた。乳がんの5年生存率は、ほかのがんに比べてとても高い。ステージ2aでは90%を超えるという統計もある。乳がんは治る、といわれる。そういえば、病院には「乳がんはこわくない」と書いてあった。残り10%に入らない保証はどこにあるのだろう?そもそも20代の乳がんなんて1万人に1人しかいない。

治療の説明を聞いたときも、5年後の話が出た。「この治療をすれば、これくらいの確率で治る」と。どこにも100%確実なんてデータはないのだ。とはいえ、もっとも長い治療が10年かかると聞いたときは、わたしにとっては希望だった。10年後も生きているのが当然なのだ、と思った。いまでは、長すぎる、とも思うけれど。

しかし、考えてみれば、乳がんになったってならなくたって、明日生きている確証はない。そう考えると少しラクになった。いまを生きるしかない。

5年前、東日本大震災があった。絶望だった。どうして福島なのだろう?どうして懸命に生きている家族がつらい思いをしないといけないのだろう?福島に住む妹が京都に逃げてくると聞いたとき、わたしは、送り出す母親の心境と、両親を置いてくる妹の心境を思って泣いた。

それから5年のあいだ、わたしは結婚をして、好きな仕事をして、欲しいものをだいたい手に入れて、幸せに暮らしている。病気にはなったけれど、まあ、トータルで考えれば人生はそんなにわるくない。

5年後、悲しいこともきっとあるだろうけれど、できれば少しだけ幸せなことが上回っていてほしい。35歳のわたしが「いまが一番楽しい」と思っていることを期待している。

はてなブログ5周年ありがとうキャンペーンお題第2弾「5年後の自分へ」
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