chirashi

エモーショナルな人生を

働くこと、LEAN IN を読んで。

女性が直面する障害物はたくさんあるが、その頂点に君臨するのが「恐れ」である。みんなに嫌われる恐れ、まちがった選択をする恐れ、世間のネガティブな関心を引く恐れ、力量以上のことを引き受けてしまう恐れ、非難される恐れ、失敗する恐れ……。そして極めつきは、悪い母親、悪い妻、悪い娘になる恐れである。

「とりあえず、エッチしよ」そう言ったのは、初めてアルバイトをした会社の関係者で、当時十代だったわたしは、大人の世界とはこんなもので若い女子は耐えなくてはいけないと無意識に思っていた。
それから数年して、また別のアルバイト先で出会った男性も「二の腕の柔らかさはおっぱいと同じなんだって〜」と言って二の腕を触ってきた。それはお酒の席だったし、やはりこんなものだと半ば諦めみたいな感情でいた。

新卒ではてなに入社し、そこはそれまでのアルバイト先と違ってとても平等と思われる空間だったけれども、わたしには「女は笑顔でいるのが正義である」という思想が染み付いていた。女性社員が圧倒的に少ない空間で、女性に対するイメージを壊すのが恐かった。

初めての開発合宿へ参加するとき、女性はわたしだけで、もしかすると部屋なんて分かれていないのかもしれないと心配した。結局きちんと部屋は用意されていたのだけれど、同時に一人のために部屋を用意するなんて迷惑だと思い込んだ。
社内恋愛を経て結婚を決めたとき、風紀が乱れるとか誰かの反感を買うんじゃないかと不安だった。もしかすると新卒の女子は受け入れたくないと思われたらどうしようと思った。
初めてチームを持つことが決まったとき、嬉しかったと同時に、女性が男性をまとめられるのか恐ろしく不安だった。その不安は、未経験からくるもので、誰しも最初は不安なのは当然なのだけれど、なぜか性別に帰着した。

どれも和を乱すのが恐かった。

わたしが心配しすぎたことは全て杞憂に終わり、誰もが優しく接してくれたし、女だからといって差別なんてする人はいない。あんなに嫌な思いをして、男女は平等でなくてはいけないと思っていたのに、自分に女性らしさを求めすぎるのは自分自身だった。和を乱す女はいけないのだと思い込んでいた(今もときどき思う)。

圧倒的に女性の少ない空間で、女性が生きるのはときどき痛みをともなう。
でも、新たな可能性を切り開くのは楽しい。会社やチームに多様性が生まれたら嬉しい。

わたしが心がけていることの一つに「誰よりおじさんであり誰より女子であること」がある。
観察と想像を駆使して、ときには演じる。しんどいけれど、自分を保つためと、相手を慮るためと、そして感情的になりすぎないために、とても有効だと思っている。

今年も、たくさんの恐れを克服できますように。
明日は仕事始めです。

LEAN IN(リーン・イン) 女性、仕事、リーダーへの意欲

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